~Ingaria~
 
まずは短編“手紙”をお楽しみ下さい。
同人誌版の誤字を直したモノです。
 
猪間神時
手紙
到達暦968年 第1季の65日目

リビンがセンデキオだと知ったら君はなんと言うだろう
もっとも、彼と一番多くの時間を共有した君のことだから、彼の銀糸のような髪と移ろう瞳をのぞき込んだときすでに気付いていたのかも知れない。

君がヴァヌクァーンへ旅だった後、シェンディティアのアカデメイアから学吏が彼の元へ訪ねてきた。
君たちが暮らしたウェディンの部屋にはネコが4匹とラヌが暮らしている。
ぼくは一度暇を見てシェンディティアに彼を訪ねてみようと思う。
なにか言付けがあれば伝えておくから次の手紙にでも書いてほしい。
それでは、どうかご自愛を。君は彼の命なのだから。
Wrantz からGnubie への手紙 到達暦968年 第1季の87日目

リビンが憑かれていることは彼女の口から聞いている。
それこそが私がヴァヌクァーンへの旅を決意したきっかけだ。
おまえのことだから彼女が連れて行かれたときは同行するとか言ったのだろう。

連中はセンデキオに人の絆を許さない。だから私はここへきた。ウェディンにいれば彼女により深い傷を負わせてしまうから。シェンディティアのアカデメイアに行くのなら是非彼女に伝えてくれ。
あのときの言葉は変わらない、と。

用事が済んだら一度ヴァヌクァーンに来るが言い。ここにはおまえを満足させる物が全てそろっている。
Gnubie のWrantz への返信 到達暦968年 第2期の24日目
アカデメイアはすばらしいところだ。彼はそういっていた。
何かを研究していたが残念ながら僕にはなんの分野かも理解できなかったよ。
見たところ至って健康的だった。精神的にも充実してるみたいだ。
君の言葉を使えたときはひどく悲しそうな顔をしていた。死にそうな顔で笑っていたよ。
すぐに元気になっていたけれど。
いずれにせよ、君が無事だと聞いてとても喜んでいた。休暇がもらえたら会いにゆくと言っていたよ。

僕はしばらくシェンディティアの町に滞在していろんな人の話を聞こうと思う。彼も君もそれを望んでいる様だからね。
きみもヴァヌクァーンに引きこもっていないでナーフに来ると良い。彼とあうのにも都合がいいだろう?

追伸
アーヴェがノルフに向かった。あうことがあればよろしく言っといてくれ。
Wrantz からGnubie への報告 到達暦968年 第3期の64日目
状況が変わった。
北が近い内に動き出すだろう。おまえはナーフを離れない方がいい、ノルフ・インガリアは戦争になる。
おまえの妹は私が保護している。近い内にツァンデリオ経由でナーフへ逃れる。その点は安心して良い。
リビンの事だが、彼女はおまえが守ってやれ。アカデメイアの学吏は彼女を何に使うか解らない。それができないのであれば忘れてしまえ。私がそうしたように。
いずれにせよセンデキオは奥義の領域。本来この世界に住む人間が忘れねばならない悪夢を暴く背徳だ。
私はその闇が怖かったのだ。その闇をのぞき見た彼女が。
だから私はシェンディティアには近づかない。
彼女を守ってくれ。
Wrantz へのGnubie の早文 到達暦968年 第3期の47日目
風の噂はナーフにも流れてきている。シンサンでひどい災厄が起きたらしい。
ヌービアは無事だろうか。アーヴェも
いずれにせよ当面は連絡にも難儀しそうだ。
混乱がサクト全土へ広がるとしたら、最悪彼をアカデメイアから連れ出す手筈を整える必要があるかもしれない。
Wrantz の日記 到達暦968年 第4期の21日目
こちらに逃げれば安全だと読んでいたが私としたことが飛んだ思い違いをしていた。
だが安心してくれ、おまえの妹は無事ナーフにたどり着ける。というかこれを読んでいる以上アーヴェはおまえの前にいることだろう。だから私のみに起こることをおまえはすでに知っているに違いない。

世界の中心にて、私はこれを書いている。
少なくとも状況が私とおまえの妹に危害を加えることはない。
だが、限界だ。

かつて私が目にした闇。悪夢の全てはここにある。
恐怖が私の扉をこじ開けようとしている。
だからこれだけを彼女に伝えてほしい。
この手紙を、彼女に渡してほしい。
Gnubie のEarwe に託された手紙 到達暦970年 第2期の38日目
長い、戦争が終わりました。
ノルフ・インガリア全土を巻き込み、サクト神聖連盟を疑心の底へたたき込んだこの悪夢は、このシェンディティアにこそ届かなかったもののナーフにもその影響は残りましょう。

ランツからあなたの手紙を受け取りました。
こんなにも思ってくれていたなんて。
あのときあの台詞を口にしたときのあなたの眼差しを思い出しました。

私たちはともに奥義を見た。あなたは神々の恐怖として。私は人々の希望として。
復興が終わったら世界の中心に会いに行きます。

そこは時代錯誤な神々が降りた場所。
そして神の時代の終止符そのものでもあった。
だからあなたは恐怖したのでしょう。
全てを思い出してしまう感覚に。
だから、あなたに会いに行きます。
そしたらふたり、手を取り合って、世界の果てまで参りましょう。
二度と誰にもじゃまされず。二度と悪夢にさいなまれ眠れぬ夜を過ごさぬように。
Levine からの届かぬGnubie への手紙 到達暦968年 第4期の19日目
リビン、おまえが恋しい。
今すぐ逢って、言葉を交わしたい。
だが、それはもやはかなわぬ定め。
どうか無事でいてほしい。
こんな最期を遂げることは許されないと解っている。
私は自分が怖かったのだ、かつてかいま見たあの世界が。
おまえならそれを美しいと言うだろう。
だから私はおまえから逃げてしまった。
もう時間がない。
私がおまえの世界から永遠に消えてしまう。
全てを思い出す。悪夢の全て。
だから私はここで終わりにしようと思う。
さようならリビン。
世界の果てで巡り会うその日に名前を呼んでくれ。
Levine からの届かぬGnubie への手紙